漫画作業②ネーム(シナリオ)

アイデアができたらネームに取り掛かります。
ネームとは下書きの下書きのようなもので
漫画原稿に手を入れる前にノートやメモ帳などに
簡単なコマ割りや人物配置を行う漫画の設計図といったところです。

人によってはセリフや展開を文章で書き出す
「シナリオ(脚本)」の作業を挟む人もいます。
原作と作画で分業する場合、漫画原作者の仕事になります。
ここで原作者が漫画家や編集とすり合わせ、
場合によっては第一稿、第二稿と繰り返していくわけです。

ネームは漫画の面白さはここで決まると言われる大変重要な作業ですが、
プロ作家でも意外と落書きのような簡素なものが多いです。
基本的なストーリーの流れが読めればいいので、必要以上に描きこむ必要はありません。
極論を言えば○して登場人物の名前などを描いただけでも問題ありません。
ただ、漫画家志望者でネーム段階で編集部に持ち込むなどといった場合は
完成図が見えやすいようにある程度描き込んでいくほうが親切でしょう。
ネーム状態での持ち込みを受け付けている編集部も少数ですが、あるにはあります。

個人的にネーム作業はスピード勝負なところがあります。
やはり自分が乗っている状態で書かないとあまり良いネームになりません。
展開に悩むことはありますが、期限を設定して短時間で描ききるようにしたいです。
納得のいく構図や展開が思いつかないといった場合、
その時点での限界ということなので、そこで手を休めることなく、
なんでもいいからとりあえず完成させて人に見てもらって意見をもらうといいでしょう。
あくまでネームは設計図であって完成作品ではないのですから
何回も描けばいいのであって、結局場数がモノを言うのです。

展開(ストーリー)の練習としては四コマ漫画を描くと言う方法があります。
これも鉄板ですが起承転結という
お話の基本的な流れを体に覚えさせるためにも有効な手段です。
しかし、もともとストーリー漫画志望だったり、
広大な長編ものを書きたい人にとって逆に4コマが難しかったりするものです。
コマ数の制限だけでなく、
コマ枠が変形できないので表現の幅も狭まります。
現行の四コマ漫画に馴染んでいないと
意外と新聞漫画のような舞台的な古風で保守的な概念に囚われたりします。
そういった限定された状況の中でいかに表現していくかがミソです。
自分になじまないと思った場合はそこまで4コマに拘る必要はないでしょう。
別に5コマでも6コマでも何コマ使ってもいいのです。
いきなり長編では時間もかかるので、話を省略するだけのことなので
絵コンテに起こして文章で補う方法でも良い勉強になります。

構図(コマ割り)は漫画を見て他人を真似ることから始めたほうが近道ですが、
本音を言えばいろいろな映画を見ることをお勧めしたいです。
今の情報過多のCG映画よりも白黒の古典映画のほうが勉強になることが多いです。
映画もフレームは固定なので4コマ作家を目指す場合も勉強になります。

しかしながら、やはり映画にはない漫画の最大の特徴といえば
このフレームを変形させる事ができるということです。
漫画は一コマ一コマの構図の完成度よりも
1ページ単位、見開き2ページ単位の構図の完成度を重視します。
この単なる絵コンテではない重層的な構造
漫画独自のメディアとしての面白さを与えています。
こうしたことを考えると最終的には漫画を見て勉強する他ありません。

アニメーター出身である宮崎駿が描いた漫画作品「風の谷のナウシカ」
一つ一つのコマは完璧なのですが、連載初期はコマが細かく非常に読みにくく感じます。
同じくアニメ畑の永野護の「ファイブスター物語」も同じような印象を持ちます。
一方で後にアニメ監督となる漫画家大友克洋の「AKIRA」などは
漫画として洗練されたコマ割りで細かい作画ながら読みやすいのです。
富樫義弘の連載時の「ハンター×ハンター」の下書のままのような走り書きでも
すらすら読めてしまうのは構図のおかげです。
アメコミもどちらかというとアニメーター寄りですが、
一コマにフォーカスするのか1ページ全体を見るのか
構図の捉え方の違いはアニメーターと漫画家で大きく変わるところです。

紙の上でできる表現は表現法として成功しているか否かに関わらず
「火の鳥」などの手塚治虫作品やトキワ荘時代の作家でほぼ出尽くしているので
こうした作品から自分が使えそうな表現を拝借するといいでしょう。
あまり参考書にも書かれないですが、コマ割りには一定の法則性があります。
左上のコマは目につきやすいのでインパクトのある絵を持ってきたり…
ページをめくる直前のコマは比較的小さく圧縮し引きを作り、
ページをめくった最初のコマで解放し落ちを持ってくるなど
漫画作品全体を通して起承転結という大きな流れがありながらも
こうした読者を引き付ける仕掛けを各ページに作り、
作品のリズムを作っていくわけです。
だらだらとただコマを繋げるだけでなく、
こうしたことを意識するだけでもネームは生き生きと変わってきます。
また、このリズム感のためにもやはり作業のスピード感が重要なのです。

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