007最新作からの日本映画論。

No Time To Die 13

こんばんは。
昨日007最新作映画「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を観に行きました。
これまで毎回新作を追っていたわけではないのですが…
ワタシアター会員で月一回は映画を観に行くと決めており、
さらに月曜はハッピーマンデーで1,100円で観れるので
今やっている映画で面白そうなものをチョイスしただけではあるのですが、
先日亡くなられた「ゴルゴ13」を書いたさいとう・たかを先生も
007の漫画を描いていたそうで、
そういうインターナショナルな世界に引き寄せられた感はありますね…

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感想

できるだけネタバレはしませんが、
主演のダニエル・クレイグ最後の007という事でかなり意義深い内容となってます。
ちなみに過去のダニエル版ボンドは一作品も見てませんw
映画を見に行く前の日に前作「スペクター」が放送されてたようですが見てません(;^ω^)
過去作見なくても楽しめると信じていたので…
(結果的に言うとスペクターぐらいは見た方が良い)


私世代のジェームズ・ボンドと言えば
やはり「ゴールデンアイ」以降のピアース・ブロスナン
金髪で青い目のボンドはイメージが違い過ぎて当初世界中で批判されましたが、
これを逆手に取ったかのような演出が良かったですね。
女性の活躍が多く、「新世代のジェームズ・ボンド」という感じで
機会があればダニエル版ボンドの過去4作品も見たいと思います。

PierceBrosnanCannesPhoto2
出典:Rita Molnár
(cropped by Machocarioca)

ゴルゴ同様に冷戦やSFブーム、北朝鮮問題など
その時の時世に合わせた舞台設定がシリーズの魅力ですが、
今回は中国やイランではなく、北欧ノルウェーがメインでした。
何か特定の時世的要因があったのかは不明ですが。
監督のキャリー・ジョージ・フクナガ日系人ということもあって
当初は日本もロケ地候補だったようです。
敵のアジトは日本とロシアが係争中とされる架空の島という事で、
なんとなく北方領土問題を意識している印象はあります。
敵サイドにロシア人科学者も出てきましたが、
ボスが能面をかぶっていたり、アジトに日本庭園和室があったりと日本的意匠が多く、
なんとなく日本寄りに感じてうれしかったですねw

世界的映画スター

派手なアクションが007の見所ですが、やはり単純明快で面白いですね。
鑑賞後はなんとなくジェームズ・ボンドになったような気分になるものです。

自分の父親が映画好きで家にホームシアターがあって
幼少の頃からいろんな洋画を横で見て育って、
それが漫画家を目指す一つの原点になったのですが、
様々な洋画の中でもスターウォーズシリーズと並んで
父親のお気に入りだったのが007シリーズでした。
なので初代のショーン・コネリーの「Dr.NO」から何作か続けて観たこともあります。
子供の頃は毎度のベッドシーンで気まずい空気になりましたが…(;^ω^)


父親が洋画ばかり見る反動もあって自分はよく邦画を借りては観たものですが、
やはりスケールと言い技術と言い
なかなか洋画に対抗できないと感じさせられます。

アメリカはアメリカ人による神話創造と言える「スターウォーズ」
イギリスには今回の「007」「ハリー・ポッター」がありますが、
日本映画においてなかなか世界レベルの娯楽大作が生まれません。
もちろん日本は歴史的な映画の伝統を持ち、
黒澤明小津安二郎などの世界的なフォロワーを持つ映画監督もおり、
多くの黒澤映画に出演した三船敏郎も世界的人気を誇りましたが、
海外の一般的な映画ファンにとってメジャーと言えるかは微妙なところです。

単純に人種のせいにできないのはブルース・リーの存在があるからです。
ジェームズ・ボンドのような白人的マッチョイズムではなく、
黄色人種的な細マッチョの代表格で、
スピーディーなカンフーアクションで世界的スターになりました。
日本でもこれに倣って
今年8月にコロナで亡くなられた千葉真一(サニー千葉)による
空手映画が作られ、海外でもカルト的人気を獲得しましたが、
ブルース・リーほどの知名度にならなかったのはやはり
人種的壁ではなく日本語という言語障壁が大きいのだと思います。
実際、千葉真一はその後ハリウッドに行きますしね。


我々が洋画を見るとき吹き替えにそれほど違和感を感じないのは
無声映画時代からの弁士という日本独自のスタイルがあったからで、
英語圏でわざわざ外国映画を吹き替えで見るというのは
日本以上に異質に感じるようです。

世界的スターは日本語をしゃべらない

日本映画においては人ではなくゴジラという怪獣が世界的スターとなったのは
言語を離さない動物的存在であるからという仮説も立てられそうです。
怪獣映画は言語が分からなくても楽しめますしね。


これを突き詰めると実写ではなく、
人物を抽象化したアニメ映画の分野で日本が世界を席巻したのも納得できそうです。
現実の日本人役者の声を英語で吹き替えるよりも
架空のアニメキャラクターの吹き替えの方が自然に感じるのです。

手塚治虫は晩年マンガ記号論を提唱し、
漫画は世界共通語であると語っていましたが、
日本語そのものを世界共通語にせずに、
映像表現を言語化してしまうという方向に日本映画は向かい、
宮崎駿高畑勲富野由悠季をはじめ優秀な才能が次々とアニメ界に入る一方で
実写界ではアイドル映画などの商業路線に入ったり、
過剰な演出、舞台的表現により、徐々にリアリティーとかけ離れ、
日本人役者が芝居下手と言われたりする原因もその辺にあるのかなと思います。

ただ日本的モチーフは今回の007にしても世界的に人気なので、
(いわゆるなんちゃって日本だけど)
あまり世界を意識しずぎて、日本らしさを失うぐらいなら
ガラパゴス的日本人の感性を信じて面白いものをひたすら作っていく事が
日本映画界にとっては重要なのだと思う。

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