弱小サークルのための「漫」チェスター戦略!

コミケなどの同人誌即売会は「お金じゃない」とよく言われますが、
お金を扱う以上は商売です。
遊びと割り切って収益がなくとも創作出来るだけの環境がある人はいいですが、
そうでない人にとっては死活問題だし、
黒字にならなくても多少なりとも売れなければ
生活費が圧迫されるだけで虚しいだけですよね?
同人誌即売会だけで飯が食えるという大手もひと握りですし、
こうやって大半の弱者はアホらしくなって
次々とリタイヤしていくわけです。
自身も弱小サークルなので何度も挫折しかけました。

今はサークル参加も抽選が多く、大手が優遇され、
弱者は同じ土俵にすら上がれないというイベントも出てきています。
プロ・アマ関係なく平等に作品を展示できるのが
同人誌即売会のいいところでしたが、
規模が大きくなるにつれて主催者側、参加者側双方に
商業性を帯びてきているのは致し方ないことなのです。

日本人はお金汚いものだと感じる傾向が特に強いみたいです。
(経済大国なのにノーベル経済学賞者が少ない)
自分も北海道の家具小売店で働いたときは
他人(メーカー)の作ったものに
上乗せした金額で顧客に売って収益を得るという
メーカーと客の間にある
卸売小売というの仕組み自体に違和感を感じていました。
これは同人誌などの転売屋に対する嫌悪感に近いかもしれません。
※もちろん小売は商品に付加価値を付けているので転売屋とは違います。

しかし、同人誌即売会はメーカーによる直売なのですから
価格設定なども自由ですし、顧客に文句を言われる筋合いはありません。
収入=評価という分かりやすい図式がある以上、
お金を稼ぐ事は何の躊躇も必要がありません。

「お金じゃない」は理想論であって現実的な問題があります。
特に弱小サークルは気にせずドンドンと売りに出るべきです!
「お金じゃない」問題は売れてから考えればいいのであって、
スケブなどのファンサービスやら
確定申告やら大手は大手なりの問題があります。

さて、こうした弱者のために
少しは役に立つかも知れない知識を書こうかと思います。
自分は北海道時代にある会社の主催する経営者勉強会に
二年ほど定期的に参加して「ランチェスター経営学」を学びました。

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ランチェスター戦略とは?

ランチェスター戦略とは元々、飛行機の登場による戦場の変化のために
イギリス人の航空工学の研究者F.W.ランチェスターが生み出した戦闘の数理モデルです。

局地戦、接近戦、一騎打ちなど原始的な戦いにおいては
単純に兵力の大きさや兵器の性能が優劣を決め
兵力が少なければ武器性能で補う事で勝てました。
戦闘力=武器性能×兵力数(第一法則)
これは弱者の戦略と呼ばれます。

しかし、広域戦、遠隔戦、確率戦などの近代戦になると
集団が同時に複数を攻撃できるようになり
この場合兵力の大きいほうが圧倒的優位な状況になりました。
戦闘力=武器性能×兵力数の2乗(第二法則)
これは強者の戦略と呼ばれます。

弱者が強者に勝つには近代兵器の使えない環境(第一法則)
で戦えば良いということになります。

例えば第二次世界大戦では
序盤、優秀な兵器を持ち、奇襲攻撃により相手の物量を減らすことに成功した
日本が優勢でしたが、徐々に武器性能が追い抜かれ、
最終的に物量の差によってアメリカに敗北しました。(第二法則)
一方でアメリカが使えない特攻戦術を使い、
硫黄島や沖縄などの局地戦では地の利を生かしたゲリラ戦を展開し
アメリカに大きな損害をもたらしました。(第一法則)
ベトナム戦争では
ベトコンが戦車の使えないジャングルで戦いアメリカを打ち負かしています。
相次ぐテロもこの弱者の戦略に当てはまります。

ランチェスター経営学を漫画家に応用する

市場シェアが1位の会社をビジネスにおける強者、
市場シェア2位以下を弱者と捉え、
「戦闘力」を「営業力」、
「兵力」を「量」、「武器性能」を「質」に置き換えて
経済学に応用したのがランチェスター経営学です。
漫画家も広い意味で個人経営者なので、
このランチェスター経営学を応用できないかという事で考えてみました。
その名も「漫」チェスター戦略

・第一法則(弱者の戦略)コミティア・マンガ賞(一次創作)
営業力=技術(画力×構成)×宣伝力

 

・第二法則(強者の戦略)コミケ・ネット(二次創作)
営業力=技術(画力×構成力)×宣伝力の2乗

ランチェスターは航空機の登場でしたが、
漫チェスターはネット・SNSの登場に着目します。
従来的なマンガ賞は宣伝力はほとんど関係なく
純粋に技術だけを磨けば良かったのですが、
現代的なSNS社会に置いては宣伝力があるものが圧倒的に強い
ブログやTwitterで情報発信するほうがしないよりも勝率が上がるし、
オリジナル作品よりも広く知られたテレビアニメなど
既存の作品のパロディー(二次創作)の方がもちろん強いです。

オリジナルで勝負をしたいと言う人は
コミケ(第二法則)に出ると惨敗する可能性が高いので、
じっくり足を止めて見てくれる
オリジナルオンリーのコミティアで勝負するべきですし、
逆にコミケの大手サークルでも
コミティア(第一法則)に行くと惨敗するケースがあるのは
二次創作ができないので宣伝力が落ちるためです。

コミケでの強者はコミティアでの強者とは限りません。
時と場合によって強者と弱者の関係は入れ替わるので
戦術を誤らないように注意しなければなりません。

もちろんオールジャンルのコミケとオリジナルオンリーのコミティアでは
単純な比較はできませんが、まずは戦う場所を間違えないことです。
特定の作品、ジャンルにしか関心のない人は
より規模の小さいオンリーイベントの方が良いでしょう。

共にコミケ(第二法則)で出展すると仮定した場合、
強者の戦略流行りものに乗っかることです。
特定のジャンルにとらわれずに流行を追った作品作りが
新たなファンも獲得できます。
弱者がこの戦略を取っても競合する大手には歯が立ちませんし、
折角の顧客も大手など他サークルに流れてしまいます。
弱者が取るべき戦略差別化です。
誰もやらないようなコアな作品ジャンルで挑んだり、
特定のジャンルに一極注力したり、
流行りものでも特定のキャラに特化した作品の方が受けが良い。

コミティア(第一法則)の場合、強者と弱者の差は幾分小さくなります。
主にプロ作家やプロアマなどの壁サークルが強者となりますが、
強者の戦略は持ちキャラを前面に出したり、
ネームバリューを生かした宣伝が効果を発揮します。
この場合の弱者の戦略も差別化で
マニアックでニッチな作品作りが効果的です。

ランチェスター経営学には「足元の敵」という言葉があり、
競争目標を自分よりも上位企業にする一方で
攻撃目標をすぐ下の企業とし、
ミート戦略によってシェアを奪うという考えがあります。
これを同人誌即売会に置き換えた場合
大手サークルとは差別化を図りながら、
逆に同レベルのサークルに対して真似をするのが得策という事になります。
ちょっと嫌な響きですが、これが実態です。

いずれにせよ技術と宣伝力は両方重要ですが、
コミケではSNSなどを通した宣伝力や目を引く表紙などに注力して、
コミティアでは技術や内容で勝負するといったところでしょうか?

自分はオリジナル中心に活動していたので、
二次創作文化自体を人の褌で相撲を取っていると感じたこともありましたが、
まず広く自分を知ってもらうため、入口としては必要かもしれませんね。
そこからオリジナルで人気を取るのも大変ですが、
最初からオリジナルよりも版権から入ったほうが近道です。

何も計算せずに好きなものを好きなだけ描く事もいいですが、
画力もあり構成力もあるのに中々評価を得られないという人は
ランチェスター戦略を取り入れてみては?

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