漫画史②手塚以後~劇画の勃興

手塚治虫の登場は革命的でした。

まだテレビがなかった時代、
紙芝居に変わって手塚漫画は子供たちに大きな影響を与え、
多くの若者を漫画家の道に引き込みました。
手塚は瞬く間にトップスターとなり、
多忙を極めたためアシスタント制度を導入し、多くの弟子が生まれました。
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トキワ荘世代(手塚チルドレン)

それがトキワ荘世代と言われる作家たちで
石ノ森章太郎、藤子不二雄、赤塚不二夫、横山光輝などです。
彼らが日本漫画の創生期を作りました。

石ノ森章太郎

手塚の正統後継者とも言える石ノ森章太郎
手塚のSF路線をさらに深化。
『サイボーグ009』をヒットさせ、
『仮面ライダー』『秘密戦隊ゴレンジャー』など
ヒーロー番組の原作者となっていきます。


サイボーグ009(1) (石ノ森章太郎デジタル大全)

藤子不二雄

藤子不二雄は藤本(藤子・F・不二雄)と安孫子(藤子不二雄Ⓐ)の共同ペンネームで
『オバケのQ太郎』『ドラえもん』『パーマン』
『忍者ハットリくん』『怪物くん』など
生活ギャグ漫画を描き少年誌において絶大な影響力を誇りました。


オバケのQ太郎(1) (てんとう虫コミックス)

赤塚不二夫

赤塚不二夫
『天才バカボン』『おそ松くん』『ひみつのアッコちゃん』など
ギャクマンガを得意としてギャグ漫画の王様と呼ばれ、
タモリを見出すなど芸能界にも交流を持ちました。


電子版 天才バカボン(1) (少年サンデーコミックス)

横山光輝

横山光輝は前者三人とは違いトキワ荘メンバーではなく、
手塚治虫の良きライバルとして頭角を現し、
『魔法使いサリー』『鉄人28号』など
今では定番になった魔女っ子やロボットという新ジャンルを発明して
月刊誌時代、手塚と人気を二分しました。


鉄人28号 《少年 オリジナル版》 復刻大全集 ユニット1

劇画ブーム(アンチ手塚)

そして手塚ルートとは別に
紙芝居、絵物語から出てきた白土三平水木しげるなどは
ファンタジーやSFを得意とした手塚流「漫画」に対して
シリアスな時代劇や残酷な怪奇ものを得意としました。
こうした流れの中で、
貸本漫画を描いていた辰巳ヨシヒロさいとう・たかをらを中心に
劇画工房が結成され、「劇画」が生まれます。

 

今では漫画の一ジャンルを指す言葉で死語になりつつありますが、
60年代後半から70年代にかけて一大ブームが起こり
当時は漫画全般を「劇画」と呼ぶことさえありました。
劇画の登場の背景には手塚に描けないものを描く意味と
漫画は子供向けのものという固定概念を払拭する意図がありました。


ゴルゴ13(1) (コミックス単行本)

劇画の特徴は絵物語にルーツを持つリアルな絵柄
手塚のカブラペンによるアニメ的な均一な描線に対して
Gペンによる強弱のある力強い描線。
手塚のディズニー映画に対して
アメリカの西部劇などハリウッド映画の影響が強く
俯瞰や煽りなどのカメラワークの構図を多用しました。

テレビアニメの登場と週刊誌の創刊

テレビの普及と共に週刊漫画雑誌が相次いで創刊。
60年代には赤本(貸本)漫画が事実上消滅し、
漫画は月刊誌から週刊誌へと活動の場を移していきます。
また手塚治虫が虫プロを作り
1963年に日本初のTVアニメ『鉄腕アトム』が放送開始、
以降、1週間のサイクルで漫画とアニメが並行して展開されることになります。

手塚に発する「漫画」とアンチ手塚を意図した「劇画」
やがて米ソ冷戦のようなマンガ界の二極構造を生みます。
特に1965年にマガジン誌上で行われたW3事件に端を発し
劇画中心のラインナップとなったマガジン
一貫してトキワ荘メンバーを中心に連載していたサンデーの競争。
白土三平の『カムイ伝』の連載をメインに
貸本漫画家の受け皿となり成長した雑誌ガロ
手塚治虫の『火の鳥』の連載をメインに
マンガエリートのための雑誌を標榜したCOMの存在、
『ゲゲゲの鬼太郎』など水木しげるの妖怪ブームに対抗した
手塚治虫の『どろろ』などが一例です。


火の鳥 手塚治虫文庫全集(1)

 
カムイ伝全集 第一部(1) (ビッグコミックススペシャル)

サンデーは作家中心の制作環境でしたが、
マガジンは編集者の力が強く、絵とストーリーを分業する方針を取りました。
こうして生まれた漫画原作者の中で注目されたのが梶原一騎小池一夫です。
梶原一騎原作の『巨人の星』『あしたのジョー』によって
スポ根ブームが巻き起こり、
スポーツものを得意としなかった手塚には冬の時代がやってきます。

多くの漫画家は多少なりとも劇画的手法を取り入れていきます。
手塚治虫もGペンを使ったり青年誌を描いたり、劇画要素を取り入れるものの
作品としての人気も陰りが見え始め、過去の人と言われるようになります。

松本SFアニメの流行とエログロナンセンス

一方で、手塚が開拓したアニメの歴史の中で
『宇宙戦艦ヤマト』という大ヒット作が生まれます。


宇宙戦艦ヤマト (1)

監督の松本零士はトキワ荘世代の漫画家で
手塚チルドレンの一人ですが、
70年代後半から80年代頭にかけて壮大な宇宙を舞台とする
『銀河鉄道999』『キャプテンハーロック』など松本アニメが流行し、
『スターウォーズ』の公開もありSFブームが訪れます。

そして石森章太郎のアシスタントだった永井豪
『デビルマン』『ハレンチ学園』など少年誌に、
同じくCOMで連載された『ジュン』など石森の心象描写に影響を受けた
24年組と呼ばれる竹宮恵子萩尾望都などの
女流作家が男性作家に変わって少女誌に、
また、小池一夫『子連れ狼』など青年誌で
それぞれバイオレンス描写を取り入れ、
時にはPTAなどと対立しながら漫画の表現を開拓していきました。

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