漫画史③大友以後~鳥山明の登場

漫画と劇画は徐々に境界が曖昧になっていきます。

サンデーやマガジン以外にも
ジャンプやチャンピオンなどの新興雑誌
そしてヤングサンデーやヤングマガジンなどの青年誌やエロ雑誌など
劇画の領域とされていた分野の雑誌が相次いで創刊され、
読者層の細分化が進み、劇画特有の手法も平均化され
劇画という運動自体の存在意義が薄れていきます。
手塚治虫は三流誌と言われたチャンピオンで
劇画要素を取り入れながらも『ブラックジャック』を連載し、見事に復活。
漫画の神様という評価を確かなものにしました。


ブラック・ジャック 手塚治虫文庫全集(1)

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ニューウェーブ

元々、少年漫画、少女漫画、劇画、大人漫画は
明確な区分けがされていましたが、
70年代後半にマイナー誌を中心にその壁を取り壊すような動きが生まれ、
この動向はニューウェーブと呼ばれました。

大友克洋、吾妻ひでお、いしかわじゅん
ニューウェーブ御三家と呼ばれました。

吾妻ひでお

吾妻ひでお不条理ギャグを開拓し、
吾妻の描く美少女は内山亜紀などロリ系漫画の台頭に影響を与え、
劇画調の絵柄ばかりだったエロ漫画界に大きな変革を起こしました。
これはコミケなど後のオタク文化の形成にまで繋がります。


ななこSOS1 (ハヤカワJA)

いしかわじゅん

いしかわじゅん
エッセイ漫画マンガ評論など漫画家として活動の幅を広げました。


約束の地 (ヤングマガジンKC)

吾妻ひでおといしかわじゅんは共にギャグ路線でファン層が被っており、
足の描き方に対して、
手塚、石ノ森から続く伝統的な大足派の吾妻と
新興の小足派のいしかわの間で大足小足抗争を展開するなど
身内ネタで盛り上がりを見せました。
こうしたパロディーネタや楽屋落ちなどのメタ表現
80年代に入り江口寿史島本和彦、田中圭一などに受け継がれます。

大友克洋

一方の大友克洋
手塚がディズニー(アメコミ)の影響を受けたように、
メビウスを始めとするバンド・デシネ(フランス漫画)の影響を受け
圧倒的なデサッン力に裏付けされた精密なタッチ
漫画界に手塚以来と言われる革命を起こしました。
漫画に映像を取り込んだと評され、
手塚治虫同様に『AKIRA』『スチームボーイ』など
アニメ制作に関わっていきます。
大友は青年向けマイナー誌で活躍していたにも拘らず、
手塚治虫を初め、トキワ荘メンバーなど大御所が相次いで言及するほどで
多くの漫画家に影響を与えました。


童夢 (アクションコミックス)

浦沢直樹トニーたけざき吉田秋生など
大友タッチは青年誌で一大ムーブメントを起こしました。
士郎正宗は大友タッチで美少女を描き、
吾妻ひでおなどの手塚路線を継ぐ美少女とは一線を画す、
立体感のある日本特有の美少女像を作り上げ、
この絵柄は桂正和などに影響を見る事が出来ます。

劇画の終わり

劇画がアンチ手塚を意図したものであったのに対して
大友自身は手塚信者であり、漫画家である事に拘ったため、
リアリティを標榜していた劇画はついに目的意義を見失いました。


80年代のメジャー誌で影響力があったのは
高橋留美子あだち充ラブコメ路線を浸透させたサンデーと
ゆでたまご原哲夫車田正美など格闘漫画で部数を伸ばしたジャンプです。
高橋留美子と原哲夫は共に小池一夫劇画村塾出身であり、
サンデーとジャンプ両誌で劇画系の流れと漫画との融合が進みます。


うる星やつら〔新装版〕(1) (少年サンデーコミックス)


北斗の拳 1巻

そして、後の漫画界に決定的な影響を与えたのが鳥山明の存在です。
ミリペンを用い大友以後らしい精密な描写を取り入れていましたが、
個性的で今までにない独特でデフォルメされた絵柄でした。

アメコミタッチの英字オノマトペを特徴的に用い、
手塚治虫同様にアメコミの影響を受けましたが、
手塚本人も後継者と名指しし、実際に手塚賞の審査員の後任に指名しています。
アラレちゃんはアトムと同じロボットです。
80年代初頭に数多くのリメイクアニメが作られましたが、
鉄腕アトムのリメイクアニメを制作していた手塚治虫が
裏番組の「Dr.スランプ アラレちゃん」を見て
「僕の作りたかったのはこういうのだ!」と嫉妬したと言われています。


Dr.スランプ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

鳥山はデザイナー出身で特定の漫画家の影響下に置かれない作家でしたが、
アニメ界から宮崎駿安彦良和永野護など
こうした他分野から漫画界に入ってくる例が80年代後半に出てきます。

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