『シン・ウルトラマン』

個人的に好きな映画です。
多くの人に見てもらいたいし、
特撮ファンとして成功して欲しいと心から願っています。
ただ映画批評として冷静に個人的な感情とは切り離してみたいと思います。

庵野秀明と樋口真嗣のタッグシン・シリーズ新作という事で
2016年公開の大ヒット映画「シン・ゴジラ」と比較されるところですが、
映画としての評価は個人的に結構差が出たなというのが印象です。
今回は庵野秀明が企画・脚本で監督は樋口真嗣という違いもありますし、
ゴジラは東宝一社でウルトラマンは製作委員会方式を取っています。

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良かった点

まず良かったところを言うと、ファンサービス満点な所や
いろいろ無茶があったオリジナルの設定に整合性を持たせた所ですね。
ゾーフィとゼットンの設定変更
マニアックな元ネタの引用も含めて賛否ある所でしょうが、
個人的には良かったと思います。
劇中でもマルチバースに触れていますが、
この物語のウルトラマンはM87(光の星)の宇宙人なので、
一種のパラレルワールドとしても楽しめます。
版権関係で直接的な言及が難しい中、
シン・ゴジラとの連続性を感じさせる演出も見事でした。
映画冒頭のお馴染みのタイトルバックから5分間は興奮しっぱなしでしたw

悪かった点

残念に思うのは複数話を一本の映画にまとめるという難しさもあるのか
短編集的な仕上がりになっており、
一本の映画としての起承転結が弱く
クライマックスに向けて盛り上がりに欠ける点、
残念ながら映画の始まりがテンションMAXで、
段々と盛り下がっていくような感じです。
長澤まさみの巨大化の当たりが中弛みな感じで、
ゼットン戦は緊迫感がなく、ラストもあっさり過ぎて
見終わった時に「ここで終わり?」と思ってしまいました…。
竹野内豊演じる政府の男が出てきた所は「おっ!?」と目が覚めましたが…w
シンゴジやオリジナルの魅力に頼り、キャラクターの深掘りがなく、
人物描写があっさりで感情移入しにくい感じですかね〜
これ実は音楽にも言えてて
シンゴジではあんなに印象に残った鷺巣さんの楽曲が
今回はオリジナル楽曲てんこ盛りは良いんだけど、
あまり印象残らないんですよね〜
米津玄師のテーマ曲はよかったのに。

特撮映画としての視点

後、目につくのはCGのクオリティ、アクションの見せ方です。
ザラブやメフィラス、ゼットンなどCGだからこそ出来る
現代風にリファインされたデザインなど良い点もありますが、
単純にシンゴジ比べてショボい
予算の関係もあるし、厳しい所だとは思いますが、
シンゴジに関しては現実対虚構」というキャッチががっちりハマってて
ゴジラと言う虚構(フィクション)の存在とCGという表現のリンク、
また、鎌田くんを始め、あからさまなCGでも受け入れられる程に
実写パート(現実)の徹底したリアリティがありました。
このへんがシンウルは中途半端なんです。
シンゴジほどリアルでもないし、コメディ要素も中途半端。
そう言う意味では
東映松竹の「怪獣のあとしまつ」の方がギャグに振り切っている分わかりやすい。
予算の関係で自衛隊の派手な攻撃シーンが少なく、
禍特対があのような実力を持たない
頭脳組織にならざるを得なかったのは仕方ないと思いますが、
こういう作りならシンゴジ同様にフルCGにするのではなく、
一部でも実写特撮を使った方が
「空想と浪漫。」を追求できたのでは?と思ってしまうのです。

限りある予算の中でもウルトラQの怪獣をたくさん出してくれたり、
オリジナルに倣ってシンゴジのCGを流用したゴメスや
パゴス、ネロンガ、ガボラなど流用着ぐるみのメタ要素を見せてくれたことは
古参ファン的には良かったなと思いますが一般層には魅力に感じづらいでしょう。

誰の映画か?誰のための映画か?

今回の映画は全体的に樋口監督が頑張って庵野秀明風味に仕立てた感がありますね。
元々の企画もスポンサー的には庵野監督に撮って欲しかったのでしょう。
シン・エヴァで多忙な庵野監督の苦肉の策として
今回のような制作体制になったのだと思いますが、
庵野秀明やシンゴジに引っ張られすぎずに
樋口真嗣の独自のカラーを出した方が一般には成功したと思います。

シンゴジでは我々の知っている地続きの世界から始まり、
そこにゴジラという存在が現れ、組織が組みあがっていく
大衆受けするカタルシスがありましたが、
今作では既に怪獣が当たり前に存在する所から始まります。
この差別化は個人的には良いと思うのですが、
その分ウルトラマンと人類の交流
そして、友情。の部分が重要になります。

しかし、ウルトラマンである神永新二と人類を代表する浅見弘子の
バディものとして見ても二人の共演シーンが少なく
実際、神永新二と浅見弘子のキスシーンまで撮影されていたようですが、
唐突すぎると言うことでカットになったそうです。
言われてみれば体臭を嗅ぐ一部でセクハラと問題になったシーンも含めて
要所要所で恋愛を意識する場面もありました。
このカットを英断とする意見もありますが、
逆にこのキスシーンを盛り上がりのピークに設定してシナリオを作り、
外星人であるウルトラマンが地球人である浅見弘子に恋をするという
シンゴジでは排除された恋愛要素を全面に出した方が
映画としてまとまりが出たような気がします。

おそらくオリジナルのウルトラマンの
人智を超越した神としての威厳を守ろうとした結果が
恋愛に対してやや抑制的な演技になったのだと思いますが…
浪漫もロマンスに通じますし、
2人の恋愛シーンをもっと入れ込むことが出来ていれば
「そんなに人間が好きになったのか」というゾーフィの言葉や
愛する者の元に帰りたいと言うラストシーンが生きてくるし、
そこにオタクではない一般層も感情移入できたと思います。

次回作に期待

デザインワークスでの庵野秀明のインタビューを見ていても
全体細かい部分は関与してないとか時間的な都合で樋口監督に任せたとか
映画の評価に対しての責任を回避するかのような言い訳をしてますねw
宣伝や選曲、モーションキャプチャー、総監修など
やりたいところだけやって
良い評価は庵野秀明に集まって、悪い評価は樋口真嗣に集まるなんて
結構残酷な世界だなと思ってしまいます。
ダイコン時代の「帰ってきたウルトラマン」から変わってないじゃんw
今回の庵野版ウルトラマン映画は三部作の予定だそうで、
二作目が庵野秀明の本当に自分が作りたかったものと言っているので
ぜひ言葉通りに「シン・仮面ライダー」終わったら
「続シン・ウルトラマン」お願いしますよ!
動員200万人突破で興行収益は31.8億円に上っているので実現の可能性は高い!


追記

メフィラス構文の名刺が欲しかったりもしたのですが、
27日の仕事終わりにレイトショーで
二回目の鑑賞に行ってきました。(特典は貰えずです…)

初回の評価よりも星一つプラスぐらい評価変わりました。
初回は「隅々まで情報を逃すまい!」と気持ち前のめりで見てたところはあるのですが、
二回目はある程度気持ちに余裕を持てたので、純粋に映画を楽しむことが出来ました。
役者の演技にも注目できたので、
意外と恋愛要素もあったし、まとまりもあったかもしれない。
やはり複数回見る事で味が出てくる映画ですね。

もしかしたら余計な先入観を持たずに
ウルトラファンじゃない人の方が純粋に映画を楽しめたかもしれない。

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